2022年59冊め

覚醒するシスターフッド

シスターフッドが覚醒する女性たちの短編集。柚木麻子さん、文珍さんのお話が好きだった。桐野夏生さんの話は「これってあの事件がベースかな?」って考えたり。こだまさんの話の中の「桃子さん」みたいな女性に私はなりたい。


37ページ:柚木麻子「パティオ8」結局のところ、それなりに年齢を重ねた男が謝罪に追い込まれた時の、必要以上に恐縮した姿は、暴力に近いものがある。心より先に身体が拒否反応を起こし、これ以上この惨めな姿を見ているくらいなら、許してしまった方が楽だと条件反射で道を譲ってしまうのだ。それは優しさやいたわりではなく、大人の男がしょげているのは、ものすごく可哀想で見るに堪えないものだと、生まれた時から刷り込まれているだけではないか。

2022年58冊め

父さんはどうしてヒトラーに投票したの? (エルくらぶ)

老若男女、あらゆる人が読んでみるといいなと思う絵本だった。


5ページ:母さんは、「この国の大人は男も女もみんな、同じ日に投票するのよ。こうやって、私たち国民は、これから数年間、国の大事な法律を決める国会議員を選ぶの」と教えてくれた。


11ページ:「これは『今のやり方はよくない』と考える人たちを閉じ込めるためのものよ」

母さんの言葉に、父さんは空をあおいで、肩をすくめて、こう言った。

「わが指導者は、すべての人が仕事につけるようになると約束したんだ。彼は約束をはたしているのに、お前はいつもあら探しばかりだ!」

母さんは何も答えず、自分のお腹をそっとなでた。

2022年57冊め

サハマンション (単行本)

2020年以降に書かれた小説かと思ったら初版が2019年。Covid19かなと感じたウイルスはMARSのことだった。昨日起こってしまった安倍元首相の暗殺事件や10年以上前に読んだカズオイシグロさんの「わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)」の登場人物のことを考えながら夜更かしして読んだ。


いろんなエピソードが絡まっているような気がするけど、最後までそれがはっきりはしなくて、でもそれこそが世界、という感覚もある。


122ページ:違う。慰められてもいいんです。慰めや配慮が必要なときはそれを受け取るのが正しいのだし、それを受け取った後でも、聞くべきことがあればそうすべきだし、その後でまた何か受け取るときには受け取ればいいんです。


訳者あとがき:サハマンションの人々について文学評論家のシン・セッピョルは「彼らは差別と排除を再生産するシステムに断固として対抗し、傷ついた訪問者には絶対的な歓待を提供する。それは抵抗とケアの共同体でもある」と述べ、詩人のキム・ヒョンは「入居者の面々は、彼らが罪人にならざるをえなかった不条理な現実を描き出し、我々の社会の弱者と少数者が向き合っている差別とヘイトの現実を振り返らせる」と語った。チョ・ナムジュ自身は、本書が刊行された際のインタビューで「敗北したように見えようが、何も変わっていないように見えようが、私たちは前に進んでいるし、歴史は進歩していると信じています。そのことを物語にこめたかったのです」と語っており、少数者が助け合って生きる姿を書きたかったという意志をはっきり表明している。

2022年56冊め

自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界 幼児期から老年期まで

自分自身に当てはまることがたくさんあって、面白かった。自分の今までの生きづらさは自分のせいだけではないって気付けることで、人は視野や生き方がグッと広がる気がする。


333ページ:Feel the Fear and Do it Anyway

2022年55冊め

回復する人間 (エクス・リブリス)

ハン・ガンさんの本を読むのは初めてだったけど、小説を読んだ!!って読後感をしっかり感じられた。もっと読みたい。


斎藤真理子さんの訳者あとがきに原題は違うと書いてあったけど、短編をまとめたこの一冊の日本語タイトルは「回復する人間」以上のタイトルはないな。「青い石」と「火とかげ」が好きだった。


275ページ:この黄色は太陽です。朝やたそがれどきの太陽ではなく、真昼の太陽です。神秘さも静けさも打ち捨て、最も生き生きした光の粒子から成る、最も軽やかな光のかたまりです。それを見たいなら真昼の光の中にいなくてはならない。あの光を経験するには、それに耐えるには、あの中に入り、上っていこうとするならばね。……あの光そのものになりたいなら、ということですよ。

2022年54冊め

オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 女子刑務所での13ヵ月

村井理子さんのあとがきに訳が共訳になった理由が書いてあった。村井さんご自身の本(更年期障害だと思ってたら重病だった話 (単行本))と繋がっている。


一人で生きていける強さと周囲にいる大事な人に支えられて生きていること、尊厳についても考えたけど、刑務所の中とどちらが安全なのかわからない場所で生きていかざるを得ない人と再犯についても考えた。


437ページ:立派な組織には自分の仕事に誇りを持つリーダーが複数いて、組織を管理するスタッフ全員と密接に関わり合っているから、全員が自分の役割を理解している。