2022年59冊め
シスターフッドが覚醒する女性たちの短編集。柚木麻子さん、文珍さんのお話が好きだった。桐野夏生さんの話は「これってあの事件がベースかな?」って考えたり。こだまさんの話の中の「桃子さん」みたいな女性に私はなりたい。
37ページ:柚木麻子「パティオ8」結局のところ、それなりに年齢を重ねた男が謝罪に追い込まれた時の、必要以上に恐縮した姿は、暴力に近いものがある。心より先に身体が拒否反応を起こし、これ以上この惨めな姿を見ているくらいなら、許してしまった方が楽だと条件反射で道を譲ってしまうのだ。それは優しさやいたわりではなく、大人の男がしょげているのは、ものすごく可哀想で見るに堪えないものだと、生まれた時から刷り込まれているだけではないか。
2022年57冊め
2020年以降に書かれた小説かと思ったら初版が2019年。Covid19かなと感じたウイルスはMARSのことだった。昨日起こってしまった安倍元首相の暗殺事件や10年以上前に読んだカズオイシグロさんの「わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)」の登場人物のことを考えながら夜更かしして読んだ。
いろんなエピソードが絡まっているような気がするけど、最後までそれがはっきりはしなくて、でもそれこそが世界、という感覚もある。
122ページ:違う。慰められてもいいんです。慰めや配慮が必要なときはそれを受け取るのが正しいのだし、それを受け取った後でも、聞くべきことがあればそうすべきだし、その後でまた何か受け取るときには受け取ればいいんです。
訳者あとがき:サハマンションの人々について文学評論家のシン・セッピョルは「彼らは差別と排除を再生産するシステムに断固として対抗し、傷ついた訪問者には絶対的な歓待を提供する。それは抵抗とケアの共同体でもある」と述べ、詩人のキム・ヒョンは「入居者の面々は、彼らが罪人にならざるをえなかった不条理な現実を描き出し、我々の社会の弱者と少数者が向き合っている差別とヘイトの現実を振り返らせる」と語った。チョ・ナムジュ自身は、本書が刊行された際のインタビューで「敗北したように見えようが、何も変わっていないように見えようが、私たちは前に進んでいるし、歴史は進歩していると信じています。そのことを物語にこめたかったのです」と語っており、少数者が助け合って生きる姿を書きたかったという意志をはっきり表明している。
2022年55冊め
ハン・ガンさんの本を読むのは初めてだったけど、小説を読んだ!!って読後感をしっかり感じられた。もっと読みたい。
斎藤真理子さんの訳者あとがきに原題は違うと書いてあったけど、短編をまとめたこの一冊の日本語タイトルは「回復する人間」以上のタイトルはないな。「青い石」と「火とかげ」が好きだった。
275ページ:この黄色は太陽です。朝やたそがれどきの太陽ではなく、真昼の太陽です。神秘さも静けさも打ち捨て、最も生き生きした光の粒子から成る、最も軽やかな光のかたまりです。それを見たいなら真昼の光の中にいなくてはならない。あの光を経験するには、それに耐えるには、あの中に入り、上っていこうとするならばね。……あの光そのものになりたいなら、ということですよ。
2022年54冊め
村井理子さんのあとがきに訳が共訳になった理由が書いてあった。村井さんご自身の本(更年期障害だと思ってたら重病だった話 (単行本))と繋がっている。
一人で生きていける強さと周囲にいる大事な人に支えられて生きていること、尊厳についても考えたけど、刑務所の中とどちらが安全なのかわからない場所で生きていかざるを得ない人と再犯についても考えた。
437ページ:立派な組織には自分の仕事に誇りを持つリーダーが複数いて、組織を管理するスタッフ全員と密接に関わり合っているから、全員が自分の役割を理解している。