2022年57冊め

サハマンション (単行本)

2020年以降に書かれた小説かと思ったら初版が2019年。Covid19かなと感じたウイルスはMARSのことだった。昨日起こってしまった安倍元首相の暗殺事件や10年以上前に読んだカズオイシグロさんの「わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)」の登場人物のことを考えながら夜更かしして読んだ。


いろんなエピソードが絡まっているような気がするけど、最後までそれがはっきりはしなくて、でもそれこそが世界、という感覚もある。


122ページ:違う。慰められてもいいんです。慰めや配慮が必要なときはそれを受け取るのが正しいのだし、それを受け取った後でも、聞くべきことがあればそうすべきだし、その後でまた何か受け取るときには受け取ればいいんです。


訳者あとがき:サハマンションの人々について文学評論家のシン・セッピョルは「彼らは差別と排除を再生産するシステムに断固として対抗し、傷ついた訪問者には絶対的な歓待を提供する。それは抵抗とケアの共同体でもある」と述べ、詩人のキム・ヒョンは「入居者の面々は、彼らが罪人にならざるをえなかった不条理な現実を描き出し、我々の社会の弱者と少数者が向き合っている差別とヘイトの現実を振り返らせる」と語った。チョ・ナムジュ自身は、本書が刊行された際のインタビューで「敗北したように見えようが、何も変わっていないように見えようが、私たちは前に進んでいるし、歴史は進歩していると信じています。そのことを物語にこめたかったのです」と語っており、少数者が助け合って生きる姿を書きたかったという意志をはっきり表明している。